時代と共に流行りや風習が変わっていくのは事実ですが、その中でもとりわけ昔と様変わりしたのが現代の人と人とのつながりです。
もちろん東京のような大都市では近所関係も親密ではないのが普通ですが、現代は田舎の地方へ行っても近隣住民との関わりは薄れている傾向にあります。
原因はさまざまですが、ネットの普及や日本の高度経済成長が大きく関係していると考えられます。

昭和の時代が終わって平成の新しい時代が幕を開けましたが、これと同時にネットが各地で普及していきました。
まだ20年前は大きなデスクトップパソコンが登場しただけでも、多くの情報を得られることが可能な時代になりました。
例えば2008年にはリーマンショックが起こりましたが、この情報を得た人の半数はパソコンからが多かったと言われています。
つまり世界の情報は少し前まではテレビや新聞、そして近所の人を通してしか情報を共有できませんでしたが、パソコンが登場してから状況が一変しました。
これによって人とコミュニケーションを取らずに情報を得られる時代に突入したため、人と人とのつながりは薄れていきました。

さらに日本は著しい経済成長を実現したため、国民全体がより豊かな生活を獲得した激動の時代でした。
バブル全盛期では高級マンションが驚くほど売られて、田舎の人が都会に移り住むように日本全体が過疎化しました。
田舎の地方はますます人口が減少しましたが、首都圏では人口が密集した結果が今に至ります。
大都市では近所つきあいをするほど時間のゆとりもなく、親しくする方が帰って事件に巻き込まれることもあります。
田舎では近所つきあいをすることで助け合い精神が見られますが、都会は物騒な事件も起こりうることから、人と人とのつながりはますますなくなりました。

バブル崩壊後は失われた20年という言い伝えがありますが、一番失われたのは景気よりも近所とのつながりであると言う専門家も少なくありません。
特に最近ではスマートフォンもかなり普及しているため、家族間でも携帯で意思伝達をする家庭も増加しています。
よって現代は近所の人と直接顔を見せる必要がなくなりましたが、これは逆に人間関係を築きにくい社会に変化してしまったと考えても良いでしょう。
SNSを利用してコミュニケーションを取るのはとても楽ですが、本来の顔を合わせた会話ではないのです。
このような社会現象が継続することで対人関係にも亀裂が生じるため、現代では大きな社会問題になりつつあります。

昔のご近所づきあい

一方で昔のご近所とのつながりはより親密でした。
携帯電話はもちろんの事、戦後はテレビも白黒の家庭が一般的でした。
よって情報を得るためには近所の人とのコミュニケーションが必須であったため、特に専業主婦たちが集まって会話をする時間が非常に多かったと言われています。

近所との関わりは単なる大事な情報収集だけではなかったのです。
戦後はあらゆる調味料が日本の家庭に登場したため、レシピを考案するために近所の主婦たちが集まって料理の勉強をすることも当たり前でした。
現在は携帯で料理に必要な調味料を調べることで簡単に作り方が出てきますが、当時は書店にいってもレシピ本は限られていたのです。
専業主婦は毎日おいしい料理を考案するために、おすそ分けをもらったり他人にあげたりすることで、日ごろから人との距離が近かったと考えられます。

会話をすることで、その地域特有の温かさを感じ取ることができることから、子供から大人まで幅広く親密な人間関係を作り上げていました。
休日は近所の家庭が集まって子供と大人同士で食事をしていた時期もありましたが、この親近感がとても重要な要素でした。
例えば災害などが発生した時には、昔は地元の自治体が住民全体に避難勧告を伝えることが難しい時代でした。
そのため集団単位で情報を共有して、危険から身を守るのに役に立っていました。
つまり安否確認を行う点でも、近所同士が日ごろから顔を見せることは大事であったことは間違いないでしょう。

住んでいる地域にもよりますが、昔は年賀状を書く風習がありました。
もちろん希薄になった家庭とのやり取りを円滑にするために適していましたが、安否確認も兼ねていました。
年賀状を受け取ることで、より距離が近くなるのは事実です。
しかし最近では年賀状の風習が希薄になりつつあり、携帯で新年のあいさつをする人が多くなっています。

日本に限らず、世界中で人よりも携帯との関係が親密になっている証拠でもあります。
携帯1つで連絡を取り合える時代は非常に便利ですが、決して親近感があるとは言い切れません。
むしろ実際に会話する機会が減少したため、昔とは違って深い対人関係を築き上げることができません。
昔の近所とのつきあいは情報を得るためだけでなく、地域特有の温かさを心から感じ取ることで生活を楽しんでいました。
そのため最近では携帯は本来持つべき心の温かさを滅ぼすという意見が、世界中の専門家から主張されています。
よって昔の生活が再評価され始めています。